香月泰男没後40年《シベリア・シリーズ》より

yasuok201402

香月泰男《シベリア・シリーズ》より

美しい太陽も,軍隊という檻につながれた私にとっては,希望の象徴であることをやめたかのように,その輝きを失って,中点に暗黒に見えることもあった.

1943年(昭和18),香月泰男は32歳で太平洋戦争に召集されました.満州ハイラルへ出征し1945年(昭和20)の終戦と同時に旧ソ連の捕虜となり,いつ終わるともしれないシベリアでの抑留生活が始まったのです.極寒のシベリアでの強制労働と飢餓に苦しむ日々は約2年間続き,その間に3箇所の収容所–セーヤ収容所,コムナール収容所,チェルノゴルスク収容所–を転々としました.次々と倒れていく仲間たちに,できることは多くありません.香月泰男自身,画家として再び絵筆を握る喜びを心に抱き,過酷な抑留生活を生き抜きました.シベリアでの2度めの冬を越した1947年(昭和22),香月泰男は毎晩毎夜夢にまで見た,生まれ育った三隅の自宅へ帰ることが叶いました.そうして日本に帰り,自由に絵筆を持てるようになった日から,香月泰男の新たな日々が始まりました.心休まる三隅の自宅にいる時でさえ,満州やシベリアでの記憶が折に触れてよみがえるようになったのです.それらの記憶はやがて作品へと形を成してゆきました.戦争とシベリア抑留から開放されたはずが,逆にシベリアに囚われたように制作を続けた香月泰男.描かれた作品群は,いつしか《シベリア・シリーズ》と呼ばれるようになりました.2014年(平成26)3月8日は香月泰男の没後40年にあたります.そこで《シベリア・シリーズ》を収蔵されている山口県立美術館のご協力のもと,《シベリア・シリーズ》の中から8点を香月泰男美術館で展示いたします.亡くなるまで描き続けた戦争とシベリアの記憶は,ふるさとで過ごす平和な日常への感謝と,家族へのあふれる愛情とともにありました.画家として成功した後も,ふるさとである山口県長門市三隅で過ごした香月泰男にとって,望まない戦争とシベリア抑留は何を残したのか——.分かち難い香月泰男の側面–“戦争・シベリア抑留から生まれた作品”と“あたたかさに満ちた日常生活から生まれた作品”–から,感じてください.(案内より)

日時:2014年3月8日(土)〜6月2日(月)
午前9時〜午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
休館日:毎週火曜(祝日の場合は開館)※4/29, 5/6は開館.5/7は休館いたします
入館料:一般500円、小中高校生200円、未就学児は無料
場所:香月康男美術館
山口県長門市三隅中湯免 Tel: 0837-43-2500 Map

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